千葉 杲弘氏(元ユネスコ・オペレーション事業調整局長):EICのキャンプ・リーダーたちの明るさ、純粋さ、バイタリティにはいつも感激しています。特にアジアを中心に多くの発展途上国の青年がリーダーを務めているのはすばらしいことです。このような多文化社会を代表する青年たちと直接キャンプで生活できる日本の子どもたちは本当に幸せだと思います。キャンプでは自分の考えをしっかり持って、英語で発信する勇気と自信を身につけること、さらに対話を通して相手を理解し、多くの友達との友好の輪を広げるための生活態度を身につけます。これが将来、国際人として求められる重要な資質なのです。

吉田 研作氏(上智大学名誉教授):かつて、とてつもなく大きいと思われていた地球も、交通手段の発達、IT革命によってどんどん小さなものになってきました。今や、インターネットを使えば、瞬時に世界中どこにいる人とでも通信できますし、個人の意見を自由に世界に発信することも可能です。そこで共通に通じる言語が必要になりますが、それが英語です。この小さな地球で全ての人々が手を取り合いながら、平和に生きていくためには英語ほど大切なコミュニケーションの手段はありません。21世紀を担う子どもたちに、英語でコミュニケーションできる力をつけて欲しいと願います。

English Immersion Camp(EIC)やEnglish Immersion Day(EID)でコミュニケーションの実践を!

向後秀明先生(敬愛大学 英語教育開発センター長 国際学部国際学科 教授):日本の学校教育の現状を考えますと、現在のグローバル社会で求められる英語力を身に付けるためには,できるだけ早い段階で,学校から外へ出て実際に英語を用いてコミュニケーションを図る経験を積むことが必要不可欠になります。まさにその機会を提供し、より効果的な手法を提案しているのが,EIC/EIDであると思います。これらの活動には少なくとも3つのメリットがあると考えています。
1点目は,英語を用いてやり取りをする場面で,思うように意思疎通が図れなかったり,誤解が生じたりする経験を通して,どうすればより適切に意図を伝えることができたか,なぜ誤解が生じたかをリフレクションし,その後の成長につなげていけることです。英語によるコミュニケーション能力の向上は,失敗した数に比例するといっても過言ではありません。失敗した数が多ければ多いほど,学びが深まっていきます。
2点目は,異なるバックグラウンドを持つ人たちとの交流ができることです。グローバル社会はdiversity(多様性)の社会でもあります。自分とは異なる文化的背景や価値観を持つ人たちを単に受容するだけでなく,互いに学び合い,協働して課題を解決していく力が求められます。人はみな違う,違うからこそ魅力がある―それを日本国内で体感できるのが,世界85か国からのキャンプリーダーが参加するEIC/EIDです。

3点目は,コミュニケーションにおける曖昧さへの耐性とリスクに立ち向かう態度が育成されることです。日本人にとって英語は外国語なので,ネイティブ・スピーカー並みに理解したり発話したりすることは困難で,英語の理解・産出の両方において常に曖昧な状態と格闘することになります。しかし,聞き取れたことをつなぎ合わせて全体の内容を推測したり,知っている語彙を駆使して言いたいことをなんとか伝えようとしたりする姿勢が重要になります。同時に,完璧ではなくても黙り込んでしまうことなく,自分の力を総動員して話しかけてみようというように,果敢にリスクに立ち向かっていく態度が育まれていきます。

普段の生活とは異なる環境に身を置くことになるEIC/EIDに参加することについて,多少なりとも不安を感じることがあるかもしれません。しかし,その不安の先には,かけがえのない貴重な経験が待っているはずです。